東京藝術大学大学院美術研究科保存修復技術専攻修了制作

 東大寺俊乗堂俊乗房重源上人像模刻 1994

 

      像高    82cm

      素材・技法  檜・漆・彩色

      写真撮影  福永代志時

      収蔵    東大寺本房写経場

 

 本坊で写経料を納め写経を行えば、拝観可能

 

 私は仏像の中でもとりわけ肖像彫刻が大好きです。特に東大寺の俊乗房重源上人像は日本の肖像彫刻の最高傑作だと思っています。その好きという思いだけで、大学院の修了制作の模刻課題に重源像を選び、東大寺さんに対して正式な手続きも踏まず、本物のあるお堂の裏で模刻制作を始めてしまいました。今にして思えば、全く恥ずかしい限りです。

 その私の姿を見て、東大寺さんは叱咤するのではなく、お寺の方で正式な書類を作って、私に学びの環境を整えて下さいました。本当に東大寺さんの懐の広さに感謝するばかりです。

 東大寺で何より感じたことは、重源像のことをお寺の皆さんは、重源さんと呼んでいることでした。もちろん、他の像も良弁さん、行基さん然りです。重源像とは鎌倉時代の美術品の傑作であるという認識しかなかった私にとって、正直いって目から鱗が落ちる思いでした。美術品であるけれど、信仰仏であり、家族なのです。それを痛切に感じました。 

 

 東大寺には2年間通いました。毎日制作したいのはやまやまでしたが、奈良で制作するにはお金が必要でしたから、月半分くらいは東京でバイトをしていました。宿泊は大学の古美術研究施設と日吉館を利用しました。亡き田村キヨノおばあちゃんと、のろちゃんには本当にお世話になりました。自炊させて頂いたお勝手の水道の蛇口に巨大なめくくじがいたこと、日吉館VIPルームには1度泊めさせていただき、会津八一さんの話も聞かせていただいたことを懐かしく思います。でも、もう日吉館の建物もなくなってしまいました。

 模刻した重源像は東大寺に奉納しました。奉納後8年位してからお寺から菩提僊那を彫ってくださいと依頼されました。あれだけ、ご迷惑をかけて学ばせていただいた上に、仕事を頂き、ただただ感謝の言葉しかありません。