東大寺の俊乗堂重源像は仏像として見ることもできるし、仏像グループから外しても何の問題もないほど時代を超えた普遍性がありますが、重源と対抗できる現代の作品は何といっても岩野勇三さんの『にけ』だと思っています。岩野さんと書きましたが、岩野先生と書くべきかもしれません。
私の出身校の東京造形大学の彫刻科の教授でもありました。私が大学3年生の時53歳の若さで亡くなってしまいました。『にけ』は最晩年のころの作品になりますが、私はこの彫刻は仏像でもあるし、神像でもあると思っています。師匠の佐藤忠良先生ばかり光はあたりやすかったけど、この『にけ』はあまりの作品としての強さと品格に言葉を失ってしまいます。
私はいつも岩野先生の53歳という年齢を意識しています。今年私は52歳になりますが、まだ天国にいるいる岩野先生にごあいさつできるものはできていません。『にけ』の作品の写真は私の仕事場の隅にいつも飾っています。岩野先生もう少し待っていてください。
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